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■開会の挨拶
本日はお忙しいなかをこの会にご参加くださいまして有り難うございました。
皆さんもご承知のように日本は世界有数の長寿国になりました。この長寿国をさらに 超長寿国にようという医療機関の建物が今年の10月東京に建設されると聞いております。それが国立がんセンターの「がん予防・検診研究センター」であります。このようにがんの治療法が急速に進歩しているとは申しましても、まだ日本人で死亡する3分の1はがんであるといわれております。しかし、これと共にがんの治療によって治癒された患者さんの数も300万人を超えたと伺っております。人は皆病気になってはじめて健康の有り難さがわかるといいます。今一番必要なことはがんにならないことで、なっても早期に発見し、進行しないうちに治してしまうことが大切なことであります。
佐川がん研究助成振興財団は佐川急便株式会社の創業者によりまして、我が国の医学、特にがん研究の発展について少しでも微力をつくせたらと願い設立されましたもので、がんの研究、治療、予防といった先端的な研究を行う研究者に対し、助成を行い、また、わたくしたちの健康を支えるための講演会等を積極的に開催し、公益法人として公共性をもった活動を行っております。今日の講演会は特に最近の乳がんの研究並びに治療の成果を皆さんに知ってもらいたいという活動のひとつで、各地でこのような講演会を行いたいと考えておりますが、とりあえず今年は事務局のある地元、京都で開催いたしました。講師には京都大学や大阪大学において第一線でご活躍の諸先生方にお越しいただきましたので、きっと皆さんのお役に立つことと思います。
それでは、ご清聴をお願いいたします。 |
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栗和田 榮一(くりわだ・えいいち)
佐川がん研究助成振興財団理事長
佐川急便株式会社代表取締役会長 |
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■基調講演1 <乳がんの予防と診断>
「予防医学」が盛んに---21世紀はゲノム研究(遺伝子診断)
日本の乳がん患者数は、1975年では1年で約2万人であったのが、2002年は約3万5千人となり、2015年には約4万8千人に増加すると予測されています。乳がんに限らず、すべてのがんは遺伝要因と環境要因が複雑に絡み合って発生します。環境要因の一つとして、日本人の食生活が欧米化したことで乳がん発生率は高まりました。また、女性の社会進出に伴う未婚の女性および高齢出産する女性の増加、さらに閉経後の肥満女性の増加も近年の乳がん患者数の増加の重要な要因です。
どんながんでも最初は一つの細胞から発生します。がん細胞は最初の5年間でほんの数ミリほどしか成長しません。検診などで発見される乳がんは一般に1~2センチですが、それでもがんが発生してからはすでに8年から10年は経過しています。
遺伝性乳がん(遺伝的要因が非常に強い乳がん)は全体の約5%程度です。自分の母親や祖母・叔母など近親者に乳がんの人がいると、乳がんを罹患する確率は高くなります。これは、乳がんを発生させる遺伝子(乳がん遺伝子)というものがあって、それを親から受け継いだ女性が非常に高率に乳がんを罹患するためです。近年、この乳がん遺伝子が発見され、どの女性が乳がんを罹患しやすいかを診断することが可能になりつつあります。
今後の医療においては、遺伝子研究の進歩により、乳がんになりやすい女性を乳がんの発生前に予知しそれを予防する「予防医学」がますます盛んになると予想されます。20世紀は病気の早期発見と正確な診断、治療の時代でした。21世紀はゲノム研究(遺伝子診断)による予知・予防医学の時代になると確信しています。 |
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野口眞三郎 氏(のぐち・しんざぶろう)
平成10年大阪大学医学部腫瘍外科教授に就任。専門領域は乳腺外科(乳がんの手術療法、ホルモン療法、化学療法)、遺伝子診断。 |
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■基調講演2 「乳がんの治療」
予防に勝る治療なし---早期に発見がポイント
乳がんは表面をさわってわかることから、昔から手術治療を中心に歴史が進んできました。現在は「乳房温存療法(乳房部分切除と放射線治療を併せた療法)」と、「胸筋温存乳房切除術」が標準的治療とされています。
放射線治療は乳がんの骨や局所の再発部位に非常に有効です。また手術の補助療法として残存乳腺にあて再発防止に利用してきました。最近は手術の困難な脳の転移などに対する有効な治療法としても用いられています。
化学療法は効果がありますが、副作用の強いものが多いので、投与の方法がいろい工夫されています。有効性が証明されていても乳がんには保険適用されていないものもあります。これに対してホルモン療法(内分泌法療法)は副作用が少ないですが、すべての乳がんに有効なわけではありません。最近は化学療法やホルモン療法を術後の補助療法としてだけでなく、手術と横一列に考えて治療する取り組みがなされています。
新しい治療としては分子標的治療や免疫療法も取り組まれ、将来の乳がんの治療方向は、テーラーメイド治療という患者さん個々の遺伝子発現の状態などを調べて個別的な治療へ向かいます。従来はだれもが同じ抗がん剤が投与されましたが、個人に合わせた副作用のない抗がん剤の使用が可能になるでしょう。
しかし、乳がん治療の結論は「予防に勝る治療はない」ということ。いかに予防するか、そしていかに早期発見するかが、乳がん治療の最大のポイントとなるのです。 |
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稲本俊 氏(いなもと・たかし)
平成3年京都大学医学部講師を経て同6年より京都大学医療技術短期大学部教授に就任。専門領域は乳腺外科、消化器外科、腫瘍免疫、移植免疫。 |
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■パネルディスカッション
「乳がん」を考える
■パネリスト
野口 眞三郎氏(大阪大学医学部腫瘍外科教授)
稲本 俊氏(京都大学医療技術短期大学部教授)
市田 ひろみ氏(服飾評論家)
■コーディネーター
平岡 眞寛氏(京都大学医学部放射線科教授)
■司 会
植月 百枝氏(フリーアナウンサー) |
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平 岡
野 口
稲 本
市 田
植 月
平 岡
野 口
平 岡
稲 本
平 岡
野 口
稲 本
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平 岡 |
乳がんの予防には、まず検診ですが、効果や受診場所などについて。
すでに乳房にしこりなどが感じられたら検診ではなく即、乳腺外科のある病院へ行ってください。また、検診は必ず触診と、乳房専用のエックス線撮影、いわゆるマンモグラフィをセットで行う病院を選ぶことが大切です。
京都府医師会が各地で行っている市民検診では、マンモグラフィも導入しているので利用してください。
産婦人科と乳腺外科は女性が行きにくい場所です。さらに患者側のプライバシーが守られにくい環境が多いと感じます。
先日、京都新聞に舞鶴の病院では婦人科系の患者さんには全員女性スタッフが対応する記事が紹介されていましたね。
乳腺外科は多くの場合、男性医師が対応します。しかし、早めの検診と治療をすれば乳がんは治るので多少抵抗があっても躊躇せずに来てほしいですね。病院も少しずつ環境改善に取り組んでいます。ところで、検診時の良性腫瘍は乳がんになりますか。
乳腺の良性疾患には乳がんに関係するものとしないものがありますが、一般に乳腺症と診断されると発生率は2倍ほど高いと考えるほうがいいでしょう。
会場の中で、乳がん手術後にリンパ浮腫で苦しんでいる方がおられます。
リンパ浮腫は、脇下のリンパ腺を切除することで、リンパの道が少なくなることから、血管から出た血液成分が帰りにくくなることをいいます。治療としては腕を使わないで安静にしていることが一番ですが、そんなことはできませんから、こまめにマッサージをする以外に画期的な治療方法がありません。将来、血管を増やす治療法などが確立されればリンパ管も増やせるので根本的治療の可能性もでてくるでしょう。
今後の乳がんの診断・治療・予防などについて。
いまは情報公開がキーワードで、患者さんにすべてを話して患者さんが選択する時代といわれていますが、乳がんと告知されたら動揺して冷静に治療法の選択なんてできない患者さんも沢山いると思います。乳がんと診断されてから手術までのわずか数週間でどこまで乳がんという病気を正確に理解し正しい判断ができるでしょうか。実際にはかなり難しいのではないかと思います。また、最近の乳がん治療は、手術療法(乳房温存手術・乳房再建・センチネルリンパ節生検等)にしても薬物療法(ホルモン療法・化学療法等)にしても非常に高度かつ複雑です。となれば、現実的な対応としては、ともかく信用できる医師を一生懸命に探してその医師に判断の難しいことは基本的には任せることも一つの選択肢ではないかと思われます。また、そのような信頼に応えるべく日々精進するのが医師の責務であると考えます。
治療の主体は患者。我々はそれをどうサポートするかということです。完全に任せておくのも一つ、複数の医師に聞くのもいい。あくまでも自分が主体で考えることです。それと患者と医師との信頼関係です。
乳がんで亡くなった兄嫁は兆候があったのに我慢し、診てもらった時には末期でした。変だと思ったらまず受診ですね。早めの検診がどれだけ大切かということがわかりました。
ときに心ない医師や看護師の言葉に傷つけられることがあります。いまの日本の教育の中でもっと思いやりや命の尊さを教えていただきたいですね。医療には人間教育も必要だと思います。機械やデータだけに頼るだけでなく、そこに人間らしい心がほしいですね。
今日の話を通じて、乳がんに対処するのは、正しい検診を受けて早期発見につとめ、しこりなどの症状を感じたらすぐに病院にいくことが最も重要だとお分かりいただけたと思います。しかし、そのためには日頃から健康に留意した生活を送って下さい。また、これからの乳がんに対する予防医学研究にも期待したいと思います。 |
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平岡眞寛 氏(ひらおか・まさひろ)
平成4年京都大学医学部助教授を経て、同7年より同放射線教授に就任。専門研究分野は放射線腫瘍学、温熱療法。 |
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市田ひろみ 氏(いちだ・ひろみ)
京都府立大学国文学科卒、服飾評論家、市田美容室代表取締役社長、現在、日本和装会会長、大谷大学講師など多くの役職を担う。 |
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司会/植月百枝 氏
京都女子大学短期大学短期大学部国語科卒、平成7年までKBS京都に勤務、以後フリーアナウンサーとして多方面で活躍中。 |
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(平成15年3月1日:京都新聞掲載記事) |
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