トップに戻る 研究助成 佐川特別研究助成賞 佐川看護特別研究助成賞 がん市民公開講座 式典 財団概要
 
 
  ホーム >> がん市民公開講座 >> 2003年度 市民公開講座  
  がん市民公開講座  
     
 
今回のがん市民公開講座
 
 
第2回市民公開講座 「前立腺がんの最新情報」
日  時: 平成16年3月20日(土) 13:00開演 16:00終了
会  場: 国立京都国際会館
参加者: 580名
主  催: (財)佐川がん研究助成振興財団
後  援: 京都府、京都市、京都新聞社、(社)京都府医師会、(社)京都府看護協会
協  賛: 佐川急便(株)
   
 
市民公開講座特別企画  
佐川美術館紹介コーナー
 ~平山郁夫・佐藤忠良の世界

当日、同会場では、「平山郁夫・佐藤忠良の世界」として、佐川美術館の協力を得て、同館所蔵の作品16
点を展示しました。市民公開講座の参加者は、休憩時間などを利用して美術鑑賞を楽しまれていました。
 
 
     
  講座の概要  
     
 
  3月20日(土)国立京都国際会館において、(財)佐川がん研究助成振興財団による市民公開講座「前立腺(せん)がんの最新情報」が開催され、診断や治療、予防について各専門医による基調講演とパネルディスカッションが行われました。会場には580人の市民が参加し、用意された質問用紙にたくさんの書き込みが寄せられ、これをもとに行われたパネルディスカッションでは参加者たちの前立腺がんに対する不安や悩みに医師たちが答える形で、熱心な討論が繰り広げられました。  
     
 
■開会の挨拶

 本日はお忙しいなかをこの市民公開講座にご参加くださいまして有り難うございます。
 日本人の平均寿命は医療技術の進歩や公衆衛生の向上によって今や世界で最も長くなっております。また、一方、死亡の状況から見ますと脳卒中に変わって、がんが死因の第1位となりまして、現在死亡者の3人に1人ががんで亡くなっていることになります。
  このことを考えますと今やがんの制圧は国民の健康対策上最も重要な課題となっております。このため、世界中でがんに対する基礎、臨床等の医学研究が続けられております。今では、診断・治療法が進歩しまして、がんは死に直結する病気ではなくなってきたと聞いております。またさらに入院期間の短縮と相まって、外来で化学治療を受けながら社会生活を続けるような方も増え始めていると聞いております。このように、今ではがんも治せる病気になりつつあります。
  しかし、治せる病気であってもその時期が問題で、やはり早期発見、早期治療を受けられることが大切で、米国では1センチメートル弱のがん組織の有無と位置も正確に検出できる画像診断装置が開発されたと聞いております。
  私達にとりまして、本当に望ましいことはがんにかからないことであります。
  このがんを未然に防ぐと言うことを研究の最終目標として日夜研究に没頭され、今日多大なる研究の成果を挙げ、今後の活躍が期待出来る研究者に対し、佐川がん研究助成振興財団では、今年度より佐川特別研究助成賞並びに佐川看護特別研究助成賞を創設し、この公開講座のあと、授賞式並びに研究助成者15名の方々に対し授与式を行うことになっております。
  この佐川がん研究助成振興財団は佐川急便株式会社の創業者が、我が国の医学、特にがん研究の発展を願い、創設されたもので、毎年佐川急便株式会社より寄付を受け、研究助成を始め、皆様方の健康を支える市民公開講座等を開催いたしております。
  昨年は乳がんにつきまして公開講座を実施いたしましたところ大変な盛況で、市民の皆さんから、是非、毎年このような講座を開いて欲しいとのお手紙を頂戴いたしましたので、今年は「前立腺がん」について、公開講座を開かせていただきました。
  講師には、京都大学、東海大学にあって教授として第一線でご活躍の諸先生方に特にお願いしましてお越しいただきました。
  それでは、ご清聴をお願いいたします。
 
栗和田 榮一(くりわだ・えいいち)
佐川がん研究助成振興財団理事長
佐川急便株式会社代表取締役会長
     
 
■基調講演1 「増えている前立腺がん:診断と予防」
  高齢になるほど発症急増 -- 進行度に応じ適切な治療を


 日本の前立腺がんによる死亡者数はうなぎのぼりに増加し、現在は2万人を超える方が毎年新しく診断されています。
  前立腺はぼうこうと尿道の境目にあり、クルミ大の大きさです。精液の一部をつくっていますが、実際の役割は未確定。直腸と近接し、肛門から指で触ることができます。前立腺の中に留まっているがんを「限局がん」、少し進行すると前立腺の外にがんが顔を出す「局所浸潤がん」、さらに進行すると、転移が出現します。前立腺がんの診断には、肛門から指を入れて診察をする直腸診、前立腺がんの腫瘍(しゅよう)マーカーであるPSA(前立腺がん診断の血液検査)、そして直腸から機械を入れる超音波検査の3つが重要です。
  前立腺がんの最も明らかな危険因子は年齢です。ほかの部位にできるがんと違って高年齢になるほど発生リスクが急上昇します。そのほか、高カロリー・高脂肪の食生活などを含めた環境要因も前立腺がんの危険因子と考えられています。
  がん治療の原則は進行度に応じた適切な治療選択です。局所がんには手術や放射線治療、転移があるなら薬での全身治療が原則です。
  また、個々の患者さんに応じた適切な治療も重要で、50代、60代の人には早期の根治治療、高齢者には負担の少ない治療を目標にして、医師と十分に話し合いながら慎重に取り組む姿勢が大切です。
 
小川 修 氏(おがわ・おさむ)
昭和32年生まれ、平成10年より京都大学大学院医学研究科泌尿器科学教授。専門領域は泌尿器科腫瘍学、泌尿器科学(腫瘍学、生殖医学、移植・再生医学)。
     
 
■基調講演2 「前立腺がんの手術」
  限局がん 手術で根治期待 -- リスク外科チームの技量で差


 前立腺がんの手術は他に転移がなく、がんが前立腺に限局しているものを対象としています。手術の目標は3つあり、まずはがんを治すこと、そして尿漏れを起さない、性機能を劣らせないことです。手術方法は、古くからある会陰式という肛門の前から前立腺に向かって器具を入れて切除するもの、恥骨後式という恥骨の裏から器具を入れてがんを切除するもの、そして腹腔鏡下にぼうこうの後ろから精のうをはがして、さらに恥骨後式同様、恥骨の裏から腹腔鏡下に前立腺を切除する腹腔鏡手術の3方法があります。
  これらの手術によるリスクは、前立腺と密接する直腸の損傷、腹腔鏡での腸管損傷、ぼうこうや尿管の損傷の他、術後の合併症による腸閉塞(へいそく)や腹膜炎、リンパ節切除によるリンパのう腫(しゅ)、尿道とぼうこうの縫合が緩んでの尿漏れ、肛門の周囲が痛むことなどがあります。さらに、こういったリスクは技術的に上達すれば避けることができるものもありますが、尿失禁と勃起不全は現在、完全に避けることはできません。
  手術は身体にメスを入れるのでやはり危険を伴います。ほかの放射線や内分泌療法などにも副作用はありますが、がんの状態と併せて年齢、個人の価値観や、泌尿器科の外科チームの技量、放射線治療チームの技量や設備からも治療法を判断する必要があります。
 
寺地 敏郎 氏(てらち・としろう)
昭和27年生まれ、平成14年より東海大学医学部外科学系泌尿器科学教授。専門領域は泌尿器科腫瘍学、泌尿器科内視鏡・体腔鏡手術。
     
 
基調講演3 「前立腺がんの放射線治療」
  多様化する「放射線治療」 -- 機器、ソフト進歩 効果高まる


 放射線治療の利点は機能、形態を残せる可能性が高く、高齢者や合併症の患者さんも対応でき、身体のどの部位にある腫瘍(しゅよう)でも照射できることです。放射線によりDNAが損傷を受けることによりがん細胞は死滅します。前立腺がんはゆっくり増殖するので、放射線の効果は、月単位、年単位でじっくり効きます。しかし、放射線治療にはがん細胞の損傷と同時に、正常な細胞も損傷させるリスクや副作用があり、また放射線が効かないがんもあります。
  現在、限局性の前立腺がんに対する放射線治療は多様化し、一つは、X線や陽子線、重粒子線などの放射線を外から当てる方法。もう一つは体内に放射線を出すものを入れて中から治療する小線源組織内照射があります。
  放射線治療の基本は、いかに正常組織の障害を起こさずに腫瘍を選択的に損傷するかです。近年、機器及び機器を動かすソフトの進歩により、より少ない副作用で大きな効果が得られるようになってきました。原体照射、強度変調放射線治療などです。最新の技術を用いれば手術と同等の成績も期待できます。日本では、放射線治療の専門家が少なく、泌尿器科と放射線科がしっかりと連携している施設でそれぞれの治療の特徴を十分聞いて、治療を選択することが肝要です。
 
平岡 眞寛 氏(ひらおか・まさひろ)
昭和27年生まれ、平成4年京都大学医学部助教授を経て、同7年より同大学院医学研究科腫瘍放射線科学教授。専門領域は放射線腫瘍学。
     
  ■パネルディスカッション
「前立腺がんを考える」


■パネリスト

小川 修氏(京都大学大学院医学研究科泌尿器科学教授)
寺地 敏郎氏(東海大学医学部外科学系泌尿器科学教授)


■コーディネーター

平岡 眞寛氏(京都大学大学院医学研究科腫瘍放射線科学教授)

■司 会

植月百枝氏(フリーアナウンサー)
 
     
 
平 岡

質 問

小 川



質 問


寺 地




質 問

平 岡



質 問

小 川




寺 地




質 問


寺 地




平 岡


小 川





植 月

小 川




寺 地


平 岡
たくさんの質問の中から多くの情報が得られるテーマについて議論します。

前立腺肥大とがん発生の関連性は(70歳)。

70歳を超えると30~50%の男性に症状を伴った前立腺肥大症が出現します。したがって肥大症とがんの合併はしばしば認められますが、肥大症からがんへ進展することは一般的にありません。

初期の前立腺がんと診断され薬で治療中だが手術か放射線治療かで悩んでいます(75歳)。

手術で再発した場合、切除周辺にがんがあるなら放射線治療、また再発したらホルモン治療と三段構えができます。最初に放射線治療を選択して再発した場合は、手術は直腸損傷や合併症の率が高いので次はホルモン治療が適切です。つまり三段構えか二段構えかの選択となりますが、個々の患者さんの年齢や状況、価値観で治療方針は変わります。

放射線の照射は長期間ですか、またはがんの大きさで決まるのですか。

放射線を外からあてる場合は毎日(月から金まで)の外来治療で約1~2カ月かかりますが、ある程度自分の生活と両立できます。中からあてる小線源組織内照射はだいたい1日入院で治療できます。この治療は限局がんしたがんのみに適応できます。

手術などの治療を要しない「がんもどき」と、早期発見・治療の整合性について(67歳)。

80歳以上の男性の前立腺を詳しく調べると、約5割にがんが見つかると報告されています。後期高齢者の生検組織診断でごくわずかなガンが発見された場合は、泌尿器科専門医とよく相談して、「がんもどき」の可能性を考えて少し様子をみることも選択肢のひとつです。

様子を見る期間を半年から3カ月おきにPSA(前立腺がん診断の血液検査)で測り、上がってくるようなら再検査の必要があります。「がんもどき」の区別方法は現在ありません。定期的なPSAの数値が急速に上がらなければ「がんもどき」と推測しますが、最終的な判断は非常に悩みます。

PSA値が5~10というがんか、がんもどきかの判断が難しい数値ゾーンの場合はどうしたらいいでしょう(70歳)。

半年ごとに測って同じ値ならいろんなケースが考えられます。前立腺の肥大症で大きくなっていたらPSAも少し高くなるので安心していいと思います。PSAはがんの場合は上昇するので、値が不変のときは様子を見ていいでしょう。しかし、50~60歳代の人は4より低くても必ず半年おきに測ってください。

多くの患者さんが最適な治療を受けるために、医療側はどういう仕組みをつくったらいいでしょう。

一つは情報公開です。治療成績や1年間に治療している症例数が出せない病院は信用されなくなってきています。その意味でもインターネットは便利な情報収集の手段です。もう一つは専門医や専門技術を認定する制度の整備です。しっかりした認定制度の設立や資格取得のための教育指導システムの整備が望まれます。泌尿器科でも今年から認定制度が大きく変わりました。

最後にみなさんへアドバイスを。

前立腺がんは共生できるがんの一つ。特に高齢の男性では、前立腺がんの診断を受けたら気持をゆったり持ち、共存していこうという気持ちへの方向転換を。医学は日々進歩しています。近い将来、遺伝子治療、細胞治療など新しい治療法が開発される可能性もあります。

私は前立腺がんを外来で告知するときは平均余命のグラフを見て、表で20年なら20年計画を立てましょうと。前立腺がんはそういう取り組みのがんだと考えてください。

前立腺がんはPSAで早期診断が可能です。治療後もそれを測定するだけで経過観察ができます。しかし罹患(りかん)数は増加傾向にあるので正しい情報を多くの方に伝え、患者さんに対して適切な診断治療ができるような対応を医師側も早急に構築しなければならないと考えます。
 
 
 
 
 
  (平成16年4月18日:京都新聞掲載記事)  
 
     
Copyright(c) 2009- The Sagawa Foundation for Promotion of Cancer Research All rights reserved.